自財人を目指す男のブログ

人生を豊かにする「財」を「自在に稼ぐ」という意味の「自財人」を目指す男のブログです。某会社の執行役員として、トレーダーとして、トレード講師として、不動産投資家としての毎日を綴っていきます。

NPBの眞鍋勝己審判に見る、プロの矜持

プロ野球のオフシーズンになると、NHKのTVで

「球辞苑」

 という番組が放送されています。

 

「究極の野球辞典を作る。」

という名目で毎回1テーマに沿って深く議論をするという内容で、毎回僕も野球少年である長男共々楽しみにしています。

 

メインMCのチュートリアルの徳井義実さんとサブMCの塙宣之さんのコンビネーションと野球選手やOBに対する深い愛情が垣間見え、出演する選手、OBの

「そこまで考え込んでやっていたのか。」

というマニアックかつ興味深い技術論が本当に面白い番組です。

 

つい最近

「審判」

という特集が組まれていました。

 

僕は常々プロスポーツの審判はどんなスポーツであれ割に合わないなあ、と感じています。

 

トッププレイヤーは莫大な年俸をもらいますが、審判の報酬というのはそんなに大したものではないと思います。

その中で完璧に裁いて当たり前、誤審をすれば自分のミスジャッジがモニター越しにメディアで散々流され、ファンにたたかれる。

微妙な判定にはプレイヤーから文句をつけられ、時には暴行まで受ける…。

しんどい仕事だなあ、と感じていました。

 

「業務を真面目にこなして恨まれる3大職業は

・警察官(特に交通違反関係)

・税務職員(税務調査)

・審判(微妙は判定がひいきチームに不利になるケース)」

というのが僕の見解で(とはいってもそう思っているのはほんの一部の方だけで大多数の方にとっては無くてはならないものですが。)、そういう人達の活動等に関してどんな話が聞けるのか、という本当に興味深く観ていました。

 

審判の一日とか今の審判養成の話等は知らない事ばかりでしたし、特に以前から不思議に思っていたストライクのコールが審判によって異なる理由というのがよく分かりました。

あのポーズが出来るのが熟練の審判にのみ与えられた特権だったとは…。

 

その中で僕が最も印象的に残ったのがNPBの現役審判員である眞鍋勝己さんのインタビューでした。

 

どんな内容だったかというとフォーメーションに関するものです。

 

このフォーメーションは僕は全く知らなかったんですが、一言で言ってしまうと外野に打球が飛んだ時の審判の動き方のことです。

 

NPBでは外野の両翼ファールラインに線審を置かない四審制を採用しています。

主審と内野の各塁審です。

そうなると外野に打球が飛ぶときが問題になります。

外野の審判がいないので外野に打球が飛ぶ時は近くの塁審が外野に走っていくのですが、そうするとベースが空いてしまいます。

ですから他の塁審がカバーに行かないといけなくなります。

 

ではどの様に動くのか。

出塁状況等から事前に決めておいた複数のフォーメーションから審判同士でサインを出し合ってそのサインに従って動いている、との事です。

 

インタビューで眞鍋さんはその審判のフォーメーションやシフトについて聞かれた時に

「全く意識しない。」

と言われました。

フォーメーションは息を吸う様なものであり特に意識する様なものでもない。

特別でもない。

と言われてました。

 

この発言、ご自身でサインやフォーメーションとかをしっかりご理解していないとなかなか言えない事だと思います。

 

眞鍋さんにとってサインやフォーメーションはもう当たり前過ぎるほど当たり前、という事なんでしょう。

 

意識せずに当たり前に出来る。

という事は実は大変な事だと思います。

おそらく眞鍋さんはかなりご自身で勉強して努力されたんだと思います。

 

眞鍋さんが身につけられたのは審判の技術でしょうが、審判に限らず技術というものは

「意識せずに使える様になって初めて技術が身に付いたといえる。」

というものだと思います。

 

最初のうちはマニュアルを参考したり誰かから学んだりして覚えますが、その段階でマニュアルや誰かを頼らずに必死にやり込もうと努力するとそのやり方が自分の中に身についてきます。

 

僕自身株のトレーダーとして株式トレードを行っていますが、やり始めの頃は必死になって勉強しました。

毎日一時間くらいは株価チャートとにらめっこしたり、土日の時なんかは一日中みていたりしました。

仕事で行っている法人の決算業務も始めのうちは全く分からず先輩に聞いたり過去の資料を読み込んだり本屋に行って専門書を読み込んだりしたものです。 

そういうことを毎日毎日繰り返しているうちにやっと自分のものになってきました。

 

眞鍋さんもそういったプロセスを経たからこそ

「息を吸う様なものであり特に意識する様なものでもない。」

と言い切れるのだと思います。

 

中には「自分はこういう努力をしてこうなった。」という事を声高に叫ばれる方もよく見受けます。

その方々はそれでしっかりと過程を踏んでこられたのでご立派だとは思いますが、今回の眞鍋さんのご発言を聞いてなんか

「久々にプロの職人の発言を聞いたなあ。」

と感じました。

 

ただ一つ残念だった事は眞鍋さんが番組スタッフの方に対し2時間近く様々な説明をしてくれたらしいのですが、そのほとんどが放送されなかった事です。

 

番組スタッフの皆さん、そんなお宝、是非放送してください…。