時間も必要ですよ…。
つい最近残念なニューズが飛び込んできました。
ヴィッセル神戸、またもや監督交代みたいです。
アンドレス・イニエスタ、ダビド・ビジャといった25年来のバルサファンにとってはたまらないビッグネームがチームに加わり、監督も知る人ぞ知る「ファン・マヌエル・リージョ」、さて数年後どんなチームが出来上がるか、と楽しみにしていました。
ところがまたバルサカンテラ(バルセロナの下部組織)上がりのセルジ・サンペールが加入し、「ますますバルサ化に拍車が…。」という報道が出た直後にリージョ監督が契約解除。
う~ん、という感じですね。
①「イズム」を浸透するには時間がかかる。
ヴィッセル神戸が目標とするのは「バルサ化」つまりスペイン・リーガエスパニョーラの強豪、FCバルセロナのプレースタイルです。
これはどういう内容なのでしょうか。
「フライング・ダッチマン」として一世を風靡した故ヨハン・クライフがバルセロナに持ち込んだプレー哲学です。
「人が走るな、ボールを走らせろ。ボールの方が人より早く、そして疲れない。」
という趣旨のもと、足元のテクニックの圧倒的に高いプレイヤーを育て、トップチームはボールをひたすら保持する事で相手をゴール前にくぎ付けにする事で自陣ゴールから遠ざける、いわゆる「ポゼッションサッカー」を展開するスタイルです。
これをヴィッセル神戸に持ち込むべく、バルセロナを退団したイニエスタを獲得し、さらにはポゼッションサッカーの第一人者、現イングランド、プレミアリーグのマンチェスターシティのジョセップ・グアルディオラ監督が過去に教えを請うたファン・マヌエル・リージョ監督を招聘しました。
ところが理由は分かりませんが、何故かリージョ監督がシーズン途中で辞任。
昨年までチームを率いていた吉田孝之氏が監督に再就任しました。
このヴィッセル神戸というチーム、上記ニュースである様に頻繁に監督が変わります。
「バルサ化」という目標があるにもかかわらず、現場のトップをこれだけ変えてしまっていいのでしょうか。
僕もバルセロナというチームを25年観ていましたが、ヨハン・クライフ監督の元、ドリームチームと呼ばれていた1990年代中盤の黄金期を経て2000年代前半は暗黒時代と呼ばれる時期がありました。
その後フランク・ライカールト監督時代にリーグ優勝、チャンピオンズリーグも制し、そこからジョセップ・グアルディオラ監督の元で黄金期を迎える訳です。
今のバルセロナの栄光の歴史というのはそれだけ長い歴史がある訳です。
今からそのチームを追いかけよう、とするチームがこれだけ頻繁に監督を変えてしまっていいのでしょうか。
②専門性の高い仕事をコロコロ変えていいのか。
そもそも親会社の楽天の三木谷オーナーの現場介入癖はプロ野球の楽天の方でも有名な話です。(もちろん噂半分もあるんでしょうが…。)
ところがサッカーに限らずプロスポーツのチーム編成なんていうのは極めて専門性の高い仕事です。
チームやプレーの方向性を決め、それに合った選手を補強し、練習メニュー等を決め…。
どれも極めて専門性の高い仕事です。
そういう専門性の高い仕事の現場のトップをコロコロ変える、それでクラブとしてのスタイル、アイデンティティーが確立できるのでしょうか。
③「スポーツビジネス」の特殊点とは。
三木谷さんは楽天グループをここまでに育て上げた素晴らしい経営者です。
そのスピード感覚でヴィッセル神戸も素早く成功に導きたいと思われたのでしょう。
ところが一般の事業会社とプロスポーツクラブの経営は決定的に異なる点が一つあります。
それは
「優勝出来るチームは1チームしかない。」
という残酷な現実です。
これが一般の事業会社なら様々な部門を立ち上げたり大きくしたりして規模の勝負とかが出来ます。
業界トップの会社の売上が1兆円ならそれを上回る数字を上げればいいという事です。
それを同業種でやってもいいし、どこかの会社を買収してもいい。
ところがプロスポーツというのは
「限られたパイの中で必ず1チームしか勝者になれない。」
という現実があります。
例えばヴィッセル神戸がJリーグで優勝しようとしたらJリーグに所属する全てのチームを「サッカーの試合」で勝つことで行わなければなりません。
そこには近道もありません。
プロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルスの初年度の田尾監督の解任の時にも感じましたが、三木谷オーナーはそこがお分かりになっていないのかな、と感じる時があります。
④時間がかかる
Jリーグは地域密着を唱っています。
確固たるスタイルを築きあげ、ただのサッカーチームとしてだけでなく、神戸市民、兵庫県民に愛され、地域を、日本を代表するチームになろうと思うと長い道のりが待っています。
そこにはどうしても時間がかかります。
逆に時間を掛けないと出来ない事でもあります。
資金力もあり、プロスポーツへの理解もある三木谷さんがそこをご理解いただけないのは残念だなあ、と思います。