3月15日は確定申告の申告期限日です。
以前税理士事務所に勤務していた時にはこの時期は本当にドタバタでした。
2月の終わりになると日の入りが少しづつ長くなってきて夕方5時過ぎても真っ暗にならなくなってくると、
「もう一踏ん張り」
と思っていたのを懐かしく思い出します。
僕が勤めている会社になかなか有能な事務の女性がいます。
この方は結婚してみえますが、ご主人が勤めてみえた会社から独立されて個人事業主として事業を始めたとの事で、うちの会社の事務の傍らでご主人の仕事の事務の手伝いをしています。
事務に関しては非常に優秀なんですが、創業の事や経理の事については知らない事だらけで、ちょいちょい質問されたりたまに細かい事の相談に乗っていたのですが、先日たまたま昼食を一緒にしていた時に
「確定申告のやり方が分からないから教えて下さい。」
と言われました。
時期は2月下旬。
内容は事業所得。
「こんな時期に何を言っているの?」
と思いましたがそこは口に出さずにもう少し話を聞くと
「商工会議所の無料相談に行っていたが話している事自体がよく分からず、記帳がなかなか進まなかった。
今年になって流石にやばいと思ってご主人と2人で確定申告やってくれそうな事務所に何軒か電話をしたらどこも
『来年分からなら大丈夫ですが今年はちょっと…。』
と断られていている。
商工会議所の無料相談も時間が合わなくてなかなか行けていない。」
との事でした。
とりあえずその時は
「一度帳簿関係を見せて。」
と言って終わりました。
(その時「何故税理士が断ったのか」という部分がちょっと引っかかり不吉な予感がしたのですが…。)
2日後、業務終了後その事務員が僕のところに書類一式(段ボールひと箱)持ってきました。
自分のパソコンも持ってこられたので立ち上げて中の経理ソフトを確認すると…。
なんと現金の仕訳しか入力していない…。
預金が全く入力されていない…。
嫌な予感、ドンピシャ的中でした。
時期は2月下旬、申告期限は3月15日、お互い仕事をしていて業務外で経理の事を教える時間もない。
しかも僕は税理士資格がないのでもし税の指導なんてやってしまったら税理士法違反になってしまう。
(ちなみに税の指導等は税理士の無償独占行為といってたとえ無償=全く報酬を取らなくても無資格者は行えない事になっています。)
本人受け皿がなくて困っている、一から記帳を教える時間もない、うーんと迷った挙句
「入力をしていないと話にならない。
但し時間を取るという観点からも申告期限という観点からも入力を一から教えている余裕はない。
但し税理士法というものがあり、全てを僕がやる訳にはいかない。
だから僕の方で記帳だけやって申告の基礎資料だけ作ってうちの顧問税理士に繋ぐ形でもいいか。」
と提案したところ
「是非お願いしたい。」
と言われました。
そこでうちの顧問税理士(僕が勤めている会社、経営している会社、両方共同じ先生です。)に状況を確認したところ、
「うちも今から事業所得の申告を入力から処理するのはしんどい。
◯◯さん←(僕の事)が下準備してもらえるなら。」
と言われたので、うちの社長にも了承を取ってから早速手をつけ始めました。
書類一式を全て目を通し、経理ソフトが入っているパソコンを立ち上げて現金の入力状況を確認し、領収書が全て入力されている事に安堵し、預金の入力を始めました。
なんやかんやで丸二日位かけてとりあえずやれるだけの処理をしましたがその中で残念な事がいくつかありました。
①一貫していない指導法
処理中に全ての書類に目を通しましたが、その中に無料相談の際の担当税理士が記入した指導用のメモ書きが何枚か残っていました。
異なる3名位から指導を受けたみたいですが、そのうちの2名から受けた売上の計上方法の指導内容がそれぞれ真逆でした。
一人の方は
「実現主義」
もう一人の方は
「期中現金主義、期末実現主義」
というやり方を教えていました。
「実現主義」を採用すると請求書を発行した時点で売上が計上されます。
借方…売掛金、貸方…売上
そうして発行した請求分が入金になったときには
借方…現預金、貸方…売掛金
となります。
この方法で処理をすれば毎月の売上も毎月末の売掛債権もちゃんと把握出来ます。
一方「期中現金主義、期末実現主義」で処理をすると請求分が入金になった時のみ
借方…現預金、貸方…売上
という処理をするだけです。
その代わり決算時に未回収債権を全て拾い出し
借方…売掛金、貸方…売上
を計上します。
どちらも一長一短ありますが、問題は
「経理の素人に全く違うやり方を教えている。」
という事です。
②減価償却の定率法への変更届出が提出されてない。
開業時の書類に全て目を通しましたが減価償却の定率法への変更届だけが見当たりませんでした。
何故? という感じです。
300万円以上するダンプカーを購入していましたが初年度ですので定額法と定率法では償却額が倍以上異なります。
幸いこれについては申告書提出時に提出すればいいのでその辺りは税理士の先生に引き継ぎました。
一連の作業は無事に終わりましたがその中で痛感したのが
「お金は掛けるところには掛けないといけない。」
という事です。
世の中には様々な企業、様々な個人事業主が様々な業種を営んでいます。
ただ一つ共通して言える事があります。
それは
「利益を追求している。」
という事。
どんな会社でも基本的にお金を稼ぐ為に存在している、経済活動を行っている訳です。
であればどれだけ売上を上げていてどれだけ経費を払っていてどれだけ利益を残しているか、ちゃんと分かってないと意味がない。
そんな大事な事を商工会議所の無料相談なんかに頼るべきではない。
ちゃんとお金をかけて専門家に指導をお願いすべきだ、という話をあいさつにみえた事務員とそのご主人である事業主の方にはしっかり話をし、二人とも納得してもらいました。
帰り際に何度も夫婦揃ってこちらに頭を下げる若い二人を見送りながら、自分も新たな気持ちで頑張ろうと思ったと同時にお金に感じて考えた一連の出来事でした。