自財人を目指す男のブログ

人生を豊かにする「財」を「自在に稼ぐ」という意味の「自財人」を目指す男のブログです。某会社の執行役員として、トレーダーとして、トレード講師として、不動産投資家としての毎日を綴っていきます。

人件費から考える、組織作りの難しさ。

「やっと」きましたね。

ブライス・ハーパーのフィリーズ入り。

 

full-count.jp

 
数字が凄まじいですね。
 
年俸総額もそうですが13年契約って…。
 
今確か26歳だから契約満了すると39歳。
 
これだけの長期契約、プロスポーツ界ではちょっと聞いたことがないです。
 
先日決まったマニー・マチャドのサンディエゴ・パドレス入りと共にメジャーリーグのフリーエージェントの目玉2名の移籍先がやっと決まりました。

 

full-count.jp

 

こちらもビッグ・ディールです。

10年契約3億ドル(321億円)

 

メジャーリーグではスプリングキャンプも始まりましたし、この2名の移籍先が決まったことで他にも大物フリーエージェントであるダラス・カイクルやクレイグ・キンブレルもそろそろ決まると思われます。

 

一番上の文章で「やっと」という表現を使いましたが、その言葉がぴったりする位メジャーリーグでのフリーエージェント契約は今どんどん後倒しになっています。

 

昨年も相当遅く、様々な理由が言われていましたが、今年はそれに輪をかけて遅くなっている感じです。

特に今年はマチャド、ハーパーという超大物の契約が中々決まらず、そこが決まらないと動かない感じでした。

一方両者をターゲットにしていない球団は早々に2019年の陣容が固まっているチームもありますね。

 

フリーエージェントの権利を手にして長期大型契約が欲しい選手。

あまり大型契約を与えてしまうとチーム作りに支障が出てしまう球団。

 

この辺りは利害が相反する関係なだけに妥協点が難しいですが、最近では大型契約を与えた選手が契約期間終盤になってくると成績が落ちてきて不良債権化するケースが多くなっており、その為球団側が長期契約を躊躇して交渉が長引くケースが多くなっています。

 

いつもメジャーリーグのシーズンオフを見ていて感じるのが

「組織における人件費のウェイトの重さ。」

という事です。

 

メジャーリーグではチームによって年俸の額が決まっている「サラリーキャップ」という制度を導入しかけてとん挫した歴史があります。

1994年に行われたストライキはこのサラリーキャップ制導入に選手会が反発した結果の出来事です。

(このストライキが原因で一時期人気が低迷しましたが、この救世主になったのが野茂英雄投手でしたね。1995年のデビューは鮮烈な印象を残しました。)

 

その後労使協定で贅沢税というものを導入しました。

チームが選手に支払う年俸総額が一定以上を越えるとリーグに対し課徴金を支払わなければならなくなります。

 

目的は

・戦力の均衡化

・年俸総額の抑制

 

です。

 

アメリカは日本と違い国土が広く、国の中に時差があります。

また有料のTV放送が一般化している為、ニューヨークやロサンゼルス等人口の多い都市を本拠地にしているチームは当然に放映権収入が大きくなります。

お金をかければ当然チームは強くなる。

ところが全30球団の中では財務基盤に格差がある。

戦力を均衡化させ、勝つチャンスをどのチームにも与え、面白くするためにこういったシステムがとられます。

このシステムがある事でチームは何も考えずどんどん人件費を高騰させていく事が出来なくなります。

 

こういった制約の中で各チームは強化の為に知恵を絞ります。

 

優勝を狙うチームは優秀なフリーエージェント選手を集め、チームを強化しようとします。

ところが優秀な選手にはどのチームも欲しがりますからそういった選手を獲得しようと思ったら冒頭のブライス・ハーパーやマニー・マチャド選手への様に巨額の契約を提示しなければなりません。

 

今回の場合はこの契約のおかげで

・フィリーズは13年間、年間2500万ドルを

・パドレスは10年間、年間3000万ドルを

一人の選手によって支払金額が固定されます。

ちなみに2019年のぜいたく税基準額は2億600万ドル。

支配下登録40名へ支払う総額のうちの12~15%が一人の選手に支払われる訳です。

 

もしこれだけの投資をしてその選手が活躍しなかったら?

 

この契約が重荷になり、新たにフリーエージェントで良い選手を獲得しようにも良い条件を提示できない。

チーム内の若手が育ってきて契約延長とかの際も不利になってしまいよその球団に移籍させれしまう。

こんなケースをよく聞きます。

ちなみに大谷翔平選手が所属するアナハイム・エンゼルスでは2012年からのアルバート・プホルスとの長期契約(10年間2億4500万ドル)がまだ3年残っています。

この契約が完全な不良債権と化しています。

 

こういう

「お金をかけたけど勝てない。」

チームがどうするかというと一旦チームを解体してしまいます。

 

高額の選手はどんどんトレードに出し、引き換えに若い選手やドラフト指名権をもらう。(メジャーリーグではドラフト指名権も譲渡できます。)

いわゆる「ファイヤーセール」ですね。

2年前にはマイアミ・マーリンズがやりました。

 

そうなるとチームは弱くなります。

弱くなるとドラフトの上位指名権がもらえます。

なんといってもアメリカは下位チームから完全ウェーバー制ですから。

だからドラフト指名権狙いでわざと負ける、いわゆる「タンキング」なんかをするチームもあるくらいです。

もちろん「わざと負けてます。」なんてことは絶対に言いませんが…。

 

そうして数年我慢して強いチームになるまで待つ。

 

この場合問題は何かというと

「人件費」なんですね。

 

高額すぎる人件費が経営を圧迫する。

その割に結果が出せない。

 

企業経営でも最大のコストは「人件費」です。

人件費と聞くと直接的な給料もそうですが、その他にも賞与や雇用保険料、社会保険料、厚生年金基金、退職積立金等も全て人件費に含まれます。

 

ここまで考えると一人採用するとかなりのコストがかかる事がお分かりになると思います。

 

しかも日本の雇用体系は一度雇ってしまうとよっぽどの不祥事でも起こさない限りなかなか退職されられない、というちょっと不合理なシステムになっています。

(個人的にはここをある程度改めないと非正規雇用の問題は解決されないんではないかなあ、と思います。)

 

うちの会社でも色んな経費の中で最も高いウェイトを占めるのが人件費です。

 

うちはプロスポーツチームでも何でもない普通の事業会社です。

ですからもし従業員の働きが悪くなったら2年前のマイアミ・マーリンズの様に「ファイヤーセール」をする事が出来ません。

 

会社の事業展開、事業部毎の充足状況、稼働設備とのバランス…。

 

様々な状況を考えながら採用活動を行います。

 

あと大事な事を。

 

一旦採用すればその方とは縁が出来ます。

これはうちの会社の方針です。

うちの社長はとても人情家です。

労基法云々関係なく従業員には長く働いて欲しい、と思っている方です。

 

その思いを形にしていくのが僕の仕事です。

だからこそ採用は慎重になり、色んな事を検討しながら進めていかなければなりません。

 

現場は人が欲しいばかりです。

ただ人件費等の絡み、売り手市場の中の人手不足の中でスムーズに進まないといけない事もあります。

 

人が増えれば人を管理する人も必要です。

管理職に昇格させればそれなりの手当も必要になります。

 

人件費が絡むと組織作りは本当に難しくなる…。