前回記事
の続きです。
ハリルホジッチ監督の解任についてです。
これについてはワールドカップ後にもその辺りの事情も全く明らかにされず、決勝トーナメントに進出した事によりあの解任次項に関して、全てが無かった事になってしまったみたいになってしまってます。
田嶋会長もその辺りの事は何の説明責任を果たす事無くいきなり西野監督の続投を要請。
西野監督が拒否するとオリンピックの代表監督である森保一さんに兼任監督を要請し、森保さんが監督に就任しました。
いやいや、あんたその前にやるべきことあるやろ…。
今やサッカーのワールドカップは国民的行事の一つです。
国民の多くが熱狂し、巨額の経済的な波及効果が得られます。
何よりも強化予算やJFAの運営費用は
「国民の税金が投入されている。」
という事です。
そこのトップがあまりにも迷走した監督人事を行っておりながら自らの説明責任、出処進退も明らかにしない。
どういうこっちゃ。
ハリルホジッチ監督だったらベルギーに勝てたなんていう事は分かりません。
大体
「未来は誰にも分からない。」
事が間違いない以上、
「これをやれば必ず成功する。」という選択肢を取る事は不可能という事になります。
である以上過去の経験から様々な可能性を考えて、多数ある選択肢の中から
「これが現状のベストである。」
という一つの選択をするしかありません。
あの選択があの時点でベストであったのか。
田嶋会長はハリルホジッチ監督解任時の会見で
「ワールドカップ本戦で勝ち上がる確率を0.1%でも上げる為に。」
と言ってましたが、じゃあそれがあのタイミングだったの?
日本はワールドカップではベスト16が最高順位です。(2002年に日韓大会、2010年南アフリカ大会、2018年ロシア大会)
今回もしベスト8やベスト4に進んでいたとしたらどうなっていたでしょうか。
ひょっとして大迫勇也選手、柴崎岳選手、昌子源選手は「メガクラブ」からオファーがあったかもしれません。
日本人のメガクラブへの移籍はかつてドイツのボルシア・ドルトムントからイングランドのマンチェスター・ユナイテッドへの移籍を果たした香川真司選手位です。
もし今回のワールドカップでもし日本がベスト16を超えて上位進出していたらメガクラブの間に止まり、オファーがあった選手もいたかもしれません。
サッカーの移籍ではチームが選手を獲得する際その選手が前チームとの契約期間内であった場合、「移籍金」というものを支払います。
メガクラブになるとその金額が巨額となり何億、何十億円という額が動きます。
その移籍金は実は総額の5%が一定の計算方法に従ってその選手が12歳から23歳までに所属したチームに入ってきます。
日本人が移籍をするとその選手を育てたクラブにも恩恵が出る、という事なんです。
ですから選手の移籍市場での勝ちが上がり、選手がメガクラブに移籍すればする程日本の育成現場が潤います。
それはまた次代の育成選手を育てる為の原資になります。
それよりも大切な事は
「メガクラブに移籍する様な選手に憧れて次代の選手が育つ。」
という事です。
1998年に湘南ベルマーレの中田英寿選手がイタリア、セリアAのペルージャに移籍して以来、日本人のトッププレイヤーがヨーロッパを目指す様になりました。
1995年に野茂英雄がロサンゼルスドジャース に移籍して以来、日本人プロ野球選手がこぞってメジャーリーグに移籍する流れが出来ました。
国内のトッププレイヤーがより高いレベルで活躍する事で国際的に注目を浴びる。
そうして更に高いレベルへと活躍の舞台を移していく。
その背中を見て若い世代がさらに高いレベルで戦う事が当たり前になっていく。
その繰り返しで国全体の競技レベルが上がっていく。これこそがワールドカップを勝ち上がる事の最大のメリットです。
ワールドカップ本戦で少しでも勝ち上がる為、今後の日本サッカー界の競技レベルが少しでも向上する為、その為にあの一連の行動が果たして最適だったのか。
どこの企業でも普通に行われるPDCAサイクルがあります。
・PLAN…計画する。
・DO…実行する。
・CHECK…評価する。
・ACTION…改善する。
というサイクルです。
JFAの様な公共性の高い組織であればこの一連の流れの中でさらに
・OPEN…公開する。
という部分も必要だと思います。
この様な巨額の資金が動き、公共性の高い組織でこれらのサイクル全く行われた様子がない事には驚きを禁じ得ません。
(行われたかもしれませんが少なくとも公開はされてません。)
僕も以前社会人サッカーチームの運営に関わっていた事があり、社会人の育成に関わっている方も少なからず知っています。
現場にみえるかたはみな殆ど手弁当やそれに近い形で一生懸命頑張ってみえます。
練習場所確保の為に朝早くから公共施設の使用の為の抽選に並ばれる方もみえます。
大体こういう組織は現場の方、現場に近い方々は一生懸命頑張るものです。
これは企業の組織でもそういう傾向がみられます。
じゃあどうやって組織が崩れていくかというと、大抵の場合は
「頭から崩れていきます。」
今回ならば
・PLAN…アギーレ、ハリルホジッチ監督はどういうコンセプトの元で、どういう経緯でオファーしたのか。
・DO…実際に任せてみた。結果両者共に解任になってしまった。
・CHECK…何がいけなったか、アギーレ監督なら身体検査をしたのか、ハリルホジッチ監督ならコミュニケーション不足の原因は何だったのかをしっかり検証する。
・ACTION…その結果次回からはどう改善するかを決める。
・OPEN…これらを公表する。
この部分がサッパリ分かりません。
結局トップが密室で代表監督人事をやってしまっている、としか言い様がありません。
よくある上場企業の不正経理や隠ぺいなんて現場で実務を行っている授業員の方は殆ど考えもしません。
殆どの方が一生懸命仕事をして、自分の務めを果たそう、この問題を何とかしないといけない、という観点から正面から業務に取り組んでいます。
では現場からの報告に関して誰がそういった判断を下すのか。
それこそが経営陣やそこに近い人達です。
そういういわゆる「上」の判断で事が決まっていきます。
2018年はスポーツ界のハラスメントとか不正とか様々なニュースが数多く報道されました。
どれが本当でどれが本当でないか、という事はあると思いますが、一つ言える事は
「ガバナンス(管理、統治体制)が機能していない。」
という事。
組織としてコンプライアンス(法令順守)を意識し、組織をしっかりまとめ、あるべき姿で目指すべき方向へ運営(経営)していく、そういうガバナンスが機能していない。
だからこそ裁量権のあるトップの人間が好き勝手なことをやり、現場に迷惑がかかる。
企業の不祥事等の謝罪会見で頭を下げて謝罪をしているトップの陰で泣いている現場の方が沢山います。
不祥事のせいで深刻な経営不振に陥り、リストラをされてしまう現場の無念の気持ちはいかばかりのものでしょうか。
現場の方々にも家族があり、生活があります。
僕は今回のJFAによるハリルホジッチ監督の解任について、上記の
「PDCA+O」がなされていない、という点について、まさに2018年に発覚した数々のスポーツ界の不祥事の中に連ねるべき事柄だと思います。
「組織は頭から腐る…。」
競技レベルで沢山の感動をもらうと同時に経営レベルで沢山の不信感をもらう事になったロシアワールドカップでした。