自財人を目指す男のブログ

人生を豊かにする「財」を「自在に稼ぐ」という意味の「自財人」を目指す男のブログです。某会社の執行役員として、トレーダーとして、トレード講師として、不動産投資家としての毎日を綴っていきます。

営業力=提案力である、と実感させられた事(後編)

昨日の続きです。

 

元々こんなに引っ張るつもりはなかったのですが、細かく思い出しながら書いていたらつい長くなってしまいました。

 

要点を簡潔にまとめる、というのは難しいですね。

今回が完結編です。

 

「営業力=提案力である、と実感されられたこと(前編)」

 

「営業力=提案力である、と実感されられたこと(中編)」

 

 

 さて先日お越しになった金融機関の方は財務諸表を直近3期分のコピーを持ち帰ったのですが、その日から1週間ほどして

「具体的に提案したい事があるのておじゃましたい。」

という連絡がありました。

 

「あれだけ洞察力のある方がどんな提案をしてくるんだろう。」

と会社の財務担当者というより個人的な興味が先立ちながらお会いしました。

 

上司の方の提案内容は以下のものでした。

「うちが

・プロパーの毎月返済必要な資金1,500万円(毎月返済額18万円)

・毎月返済不要、任意時期の返済可能な保証協会付き融資の2,000万円

合わせて3,500万円の融資をするので、同額程度残っている融資残高3,300万円、毎月返済額80万円の政府系金融機関の返済を終わらせてしまったらどうか。

そうする事で毎月返済の差額が60万円強出てくるので当面のキャッシュアウトを減らし、流動資産を分厚くしたらどうか。」

 

という内容でした。

 

 

会社というのは収益=売上から費用=経費を引いた金額が利益です。

 

例えば

・売上が1,000万円

・経費が800万円

なら利益は200万円になります。

ところが売上や経費の発生時期と実際の入金や支払時期、というのはどうしてもズレます。

小売店等の現金商売なら話は違いますが、BtoB、つまり会社対会社の取引になると、「掛売」、「掛仕入」が発生します。

1ヶ月分の売上を月末とかに締めて請求書を発行して1ヶ月後や2ヶ月後に回収する、支払う、という取引ですね。

さらに売上の一部を手形で支払う、という厄介なケースも出てきます。

入金予定日に手形をもらう、それは数ヶ月後に現金化される、というものです。

 

さらに経費の中でも大きな資産を購入すると一度にその年の経費にならずに数年かけて費用化=経費になる減価償却費というものもあります。

これらの事から財務諸表上の利益とキャッシュの動きに差が出てきます。

 

ただ差が出ながらも一般的には

「当期純利益ブラス減価償却費の合計が向こう一年間で返済する借入金を上回れば資金繰りは順調。」

という見方が出来ます。

 

利益が200万で経費の中でもキャッシュアウトの発生しない減価償却費が100万あるとしたら、年間に生み出されるキャッシュは300万になります。

会社が資金調達の為に借入を起こしていたらそれを返済しないといけないのですが、借入金総額のうち年間返済額が300万以下なら会社は資金不足に陥る事は無くなります。

 

うちの会社のファイナンス上の欠点としてこのバランスが極めて悪く、年間の返済額が多すぎる為、利益がマイナス方向に振れてしまうとすぐにキャッシュがショートしてしまう。

以前の債務超過も無くなって会社の財務内容はかなり改善されてきているし、会社の借入総額や金利としては問題ないと思うが資金調達額と返済額のバランスがとれていない。

 だからこのバランスを何とか修正する為に借入総額を変えずに返済方法を変えたらどうか、その為の上記提案でした。

 

もしこれが実現すれば

・借入金の総額はさほど変わらないものの短期借入金(借入金のうち一年以内に返済しなければならないもの)と長期借入金(直近一年以降に返済すればよいもの)の内訳が変わる。

・上記の結果短期借入金が減り、長期借入金が増えるので直近の借入金返済額が減少し、その結果手持ちのキャッシュは分厚くなる。

当然当座比率や流動比率といった企業の短期的な支払い能力を示す指標は改善される。

・メインバンク、準メインバンク、政府系金融機関に加えて今回の金融機関との融資取引が実現すれば取引銀行も増え、資金調達先、調達手段も多彩になる。

と当社にとってのメリットが色々出てきます。

 

この提案を社長と色々検討し、提案を受ける事になりました。

 

当初自分としては今回の金融機関の提案を受ける気は全くありませんでした。

以前の担当者の失礼云々ではなく、現段階でこの金融機関からの資金調達を他の金融機関同様に証書借入の形で受けてたとしても先日他の金融機関で資金調達を受けたばかりで、当社にとってのメリットが見えなかったからです。

 

ところが今回の金融機関の提案はうちの会社の財務諸表をしっかり分析し、財務責任者の僕にしっかりヒアリングした上で、従来の金融機関にはない形でうちのメリットになる提案をしてきた。

だからうちも喜んでこの提案を受けた。

 

「相手の望むものを売る。」

というより

「相手が知らずにいることを指摘してそこをクリアできるものを売る。」

この事がすごく印象に残りました。

 

現代社会のモノや情報があふれ、消費者の目が肥えてきて以前の様な爆発的なヒット商品が出づらく売れ筋商品が細分化する中でも、相手に向き合い、商品を売ったりサービスを提供する事が相手にとってどんなメリットがあるかをしっかりと話をする。そうすればモノやサービスは売れるんだ、という事を再認識させられました。

 

今回の事で僕自身も一つ学びました。

 

人は何歳になっても学ぶことが出来、誰からも学べます。

自分が周囲にしっかりアンテナを張り、どん欲に謙虚にいれば周囲の誰もが自分の先生、師匠になりえます。

 

そんな色んな事を考えさせられた商談でした。

 

こういうことが経験できると仕事って面白くなります。