先日、僕が講師をしている株式スクールの定例の勉強会がありました。
この勉強会は株のトレード理論を教えている通常の授業ではなく、理論を基にどの様に実践に落とし込んでいくのか、という事を参加者で議論する勉強会で、2ヶ月に一度のペースで開催され、前月の内容が理解されているかどうか、という事を翌月にテストがあります。
皆さん熱心に授業を受けてみえますが、ここで痛感するのが
「一回授業を聞いて『なるほど』と思ったはいいが、そこで終わってしまっている人が非常に多い。」
という事でした。
この勉強会は株式スクールの講師陣が定期的に集まり、そこで持ち回りで一人がテキストを作成し、残りの講師陣とそのテキストの内容をチェックして訂正してから生徒さんに配布します。
ですので2ヶ月に1度新しいテキストが配布されます。
という事は年間6冊づつテキストが増えていく訳です。
テキストが増えていくのはいいんですが、それを確実に理解しないまま次のテキストを手に取り、次のテキストを勉強している間に前回のテキストの内容を忘れてしまう、という方が非常に多い、と感じています。
僕なんかもそうですが何かの話を一度聞いただけではなかなか覚えられません。
それが専門的であったり、高度になればなるほど益々そうなります。
特に株のトレードの様な理論から技術を組み立てないといけない様なものは何度もテキストを読み込み、株価チャートともにらめっこして、ある程度の時間をかけながら自分の技術にしていかないといけません。
僕も仕事でセミナーを受講したり、専門家から詳しいレクチャーを受けたりする機会があるのですが、しばらく経過してからその時の資料を読み返しても時間の経過と共に「?」となってしまってる事が非常に多いです。
余談ですが、
「年齢と共に物忘れが激しくなる。」
というのは本当かもしれませんが、実は本当でないかもしれません。
学生の頃は学校の授業プラス宿題というパターンが効率的に記憶を定着させる方法でしょうし、就職後も職種にもよりますが若い頃は比較的単純な仕事が多いでしょうし、それはイコール繰り返しにより記憶に残る、という事もあると思います。
年を取るにつれてそういう作業をしなくなるから忘れやすくなるという側面もあるのではないでしょうか。
人間の脳の働きが完全に解明されていない、というより解明されていない部分が多いのでなんともいえませんが。
僕自身も株のトレードは本当に勉強しました。
授業に何度も通い、チャートを何度も眺め、分からないところは先生に聞き、細かいトライ&エラーを重ねて少しずつ出来る様になって行きました。
月に一度、どこかの日曜日で東証一部の銘柄を全て見ると決めて5、6時間かけてみていた時期もありました。
本当に「理解」する為には授業を「聞く」だけではおそらくダメなんだろうと思います。
これは授業に限らずだと思いますが
「聞く=理解する」
という事にはなりません。
「聞く」という行為を「理解する」という行為に昇華させるまでにはそれなりの時間がかかります。
それが分からない人は授業はしっかり聞くものの自宅での復習をあまりせずに実践に行ってしまいます。
実践をするな、という事ではなく、実践と同じくらい理論の復習をしないといけない、ということです。
もしくは実践をする時に必ず
「この局面では理論のどこに該当するんだろう?」
と必ず理論との整合性を確認する作業と並行して行わなければならない、という事です。
そうすることで理論と実践という2本立てだったものが理論が自分の中に溶け込んで行き、実践をする時に理論が伴い実践の精度が上がって行くんだろうなあ、と思います。
それが分からない人は次から次へと新しい理論を詰め込んでいき、整理しきれないまま進んでしまいます。
分かる人は何度も何度も基本の部分に立ち返ります。
新しく学んだ事と基本との整合性を常に図っていきます。
駅前や郊外にある大型の書店に行くと株の本は本当に沢山並んでます。
1500円前後の本が多い印象ですが、その本を一冊手に取られたり実際に購入される方は多いと思いますが、購入された方の中でその本を100回でも200回でも分かるまで読み込む方がどれほどみえるでしょうか。
1回、2回は読むと思います。
但し100回読む方はどれだけみえるでしょうか。
しっかり読み込んで分からない事、不明な語句を全て調べきり、
「全て完璧に理解した。」
というレベルまでやりきる方がどれだけみえるでしょうか。
「聞く」、「本や資料を読む」という状態からその内容を「理解する」というレベルに達するまではそういった段階を経て初めて到達するものだと思います。
僕も仕事柄専門性の高い話を「聞く」という事が多いです。
それらの内容を「理解」する為に「聞く」と「理解する」の間に存在する作業、プロセスをしっかり認識してこれからも過ごしていきたいと思います。